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トランスジェンダーへの偏見を大幅に減らす科学的な方法!「ディープ・キャンバシング」とは?

photo by Smithsonian's National Zoo

「ディープ・キャンバシング(深い戸別訪問)」という方法が、トランスジェンダーへの偏見を大幅に減らすことが実証され、詳細が学術誌『サイエンス』誌に発表されました

キャンバシングとは「個別訪問」のことでフォン・バンキング(電話)と並びアメリカの選挙運動でボランティア活動の中核を占めるものです。

「ディープ・キャンバシング」は、2009年にカリフォルニアで提案八号(プロップ8・同性婚を禁止するもの)の後、様々な方法で「なぜ提案八号は通ってしまったのか?」そして「彼らの意見を変えるためにはどうしたらよいのか?」を模索するなかで生まれました(参考記事)。

ディープ・キャンバシングは多くの場合、10分から20分程度の会話であり、内容は、合理的な正しさを追求したり、相手の意見を変えようとするものではなく、相手に質問をしたり、相手の答えに耳を傾けながら。差別されたり攻撃されたと感じた時の個人的な体験談を共有することが目的です。通常のキャンバシングは、チャート式のスクリプトががっちり決まっていて、それを読むだけでよく、むしろ、そのスクリプトから逸脱しないように言われるので、このような「自由な会話」形式のディープ・キャンバシングは特徴的です。

「決めつけず、傷つきやすいところもさらけ出して、婚姻やゲイであることについて、実体験からの経験を分かち合う時にこそ、私たちは人々の気持ちを変えることができるのです」LGBTセンターのディレクター、デイヴィッド・フレッチャーは言います。

ディープ・キャンバシングをしたトランスジェンダーのナンシー・ウィリアムスは、ボランティアを始めた直後に経験した「反差別法」の制定に反対していた男性との会話を覚えています。「『高校は誰にとっても辛い時期だ』と繰り返す彼は、まるでトランスの子どもたちが、皆が苦しんでいる問題を持っていないかのように考えているようでした。そこで私は自分の父親がガンで闘病中であったことを伝え、性別移行に伴う全てに直面することがとても辛かったことを伝えました。愛する人々から拒絶されるか、父親を失うか、もし一つだったら我慢できたかもしれません。でも、両方は無理でした」

ウィリアムスの話を聞いた男性は、これまでそれがどんな感じなのか考えたこともないよ、といいながらも、彼自身イジメにあったことはあることを言いました。おそらくその経験を通じて、反差別法に対してもう少し支持をしてくれるようになったのではないかと、ウィリアムスは考えています。ディープ・キャンバシングは、直接の対話に効果があるだけでなく、運動員自身がトランスジェンダーでなくてもよく、動画やニュースクリップを見ることでも効果があるようです。

↑この動画を見ると、ディープ・キャンバシングを受けた有権者が1分半くらいから反応を示す場面がありますが……これが泣けます。

「あなたもわたしと同じ権利を持つべきだと思う」「僕が見る限り、君は普通の人間だよね……。皆が持っているもの全てを彼らも持つべきだよね」

選挙運動の指導者や、活動家が体験的に「効果がある」と知っていたこのディープ・キャンバシングの効果に、今回の調査によって科学的な裏付けが与えられました。

調査は、スタンフォード大学とUCバークレー大学の研究者により、フロリダ州においてトランスジェンダーへの偏見をテーマに行われました。ディープ・キャンバシングを行った後のアンケート結果では、平均で1から100までの好感度調査によると、10ポイントもトランスジェンダーの人々への印象が上がっていました。同性愛者に対する一般の印象が1998年から2012年の間に8.5ポイント上がったことと比較すると「15年分の印象アップが、たった10分間で達成できた」のです。

ディープ・キャンバシングの効果は長続きするのも特徴です。フロリダ州での実験では、ディープ・キャンバシングを行った3ヶ月後に改めてアンケートを行ったところ、トランスジェンダーに対する好ましい印象の変化は継続していたそうです。

現在大統領選挙をめぐる運動が活発に行われており、またLGBTの権利をめぐって多くの差別的な法律が審議されているなど、大事な時期です。「ディープ・キャンバシング」という方法はこれまで以上に取り入れられていくことでしょう。

また、選挙運動以外でも、ディープ・キャンバシングという考え方は、わたしたちが日常のなかでどう周りの人と接するかというヒントになるかもしれません。もしも差別的な発言をする人と出くわした場合、「合理的に反論」しようとするのではなく、心を開いて、自分が過去に苦しんだ経験を分かち合ってみたら……。テレビの広告なんかよりも、ずっと強力な働きかけができるかもしれないのです。

<おまけ>

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