#あたシモ

アメリカで働くレズの徒然

映画『Girls Lost』感想 -- ロサンゼルスのLGBT映画祭『OUTFEST』レビュー①

ロサンゼルスのLGBT映画祭『OUTFEST』で観た映画のレビュー第一弾です。

Girls Lost(原題:Pojkarna)

あらすじ

スウェーデン映画。キム、ベラ、モモの三人は、地味な女子高生。学校で男子から「ブス」といじめられながらも、かばい合う仲間たち。ある日、不思議な種をみつけます。一夜にして花を咲かせたその不思議な植物。花の蜜を口にすると、三人の体は変容し、「男の子」になれるのです。しかし、この秘密の花に出会ってから三人の運命は変わってしまいます……。

感想

この作品のすごいところは、まず、男同士の恋、女同士の恋、そして性自認のゆらぎという三つの要素を含んでしまっているところです。LGBT映画祭で上映される作品は、だいたい「これは♀♀メイン」「これは♂♂メイン」「これはトランスもの」とジャンルがはっきり別れてしまうわけですが、この作品については、英語タイトルに「ガールズ」とついてはいるものの、ゲイっぽさもあり、トランスっぽさもある作品なのです。

「本当の自分は男だ」と感じ、とまどいを打ち明けるキムの姿は、トランスジェンダーにとっては切実なものだろうし、モモが「自分たちが『男装』を楽しむのとは違ったレベルで、キムにはこれが必要なのだ」と悟る瞬間なども、とてもリアルです。

男になったキムが、女の時は交流することができなかったトニーと男同士として知り合い、惹かれ合っていく様は、まんま「ゲイの目覚め」っていう感じ。彼女とのいちゃつきを見せびらかし、暴力的な態度で自らのゲイネスを否定するトニーが、キムに対して暴力的になるトニーの描写なども、痛いけど、よくある話。

そして、キムに対して恋心を抱いているモモ。トニーに夢中になるキムに対し、自ら男の姿になって迫るけれども、「それではダメなんだ」と拒絶され、「じゃあどうすればいいの」と絶望するモモ。女の子の姿でも男の子の姿でもダメ。ううっ、切ない。

あと、絵がキレイだったのもよかったです。風景とかが絶景!っていうのではなくて、むしろ廃墟的なところとか、小汚い感じもあるのですが、やっぱり思春期の少年少女って美しい。映画の冒頭で、明るいプールのなかで泳ぐキムとモモの姿が、映画の中盤でキムとトニーの組み合わせで再現される。夜の海の真っ黒な水のなか、触れ合おうとする二人の体は美しくて、見とれてしまいました。

しかし、残念だったのは、ラストシーンです。ネタバレになるので、詳しくは書きませんが、「ここまでSFというか、ファンタジーな設定なんだから、ぶっ飛んだハッピーエンドでもよかったのでは?最後だけリアルにする必要はないでしょ」という感じ。ものすごくユニークな設定なのに、ストーリーラインと結末がありきたりで、一昔前のレズビアン思春期映画っぽい終わり方でした。←察してください。

評価

  • ユニークなアイデア度 ★★★★★
  • 泣ける度 ★★★★★
  • 悲劇度 ★★★★★