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アメリカで働くレズの徒然

若年性アルツハイマーの哀しみを描いた映画『アリスのままで』感想

ジュリアンムーアがとうとうアカデミー賞をとった作品『Still Alice(邦題:アリスのままで)』を観てきた。主人公は、コロンビア大学言語学の教授を勤め、成功した夫と三人の子供にも恵まれ、幸せだったアリス。子供は弁護士に医者の卵。別荘もある。そんなアリスに訪れた若年性アルツハイマーという病。初めは時折言葉が出てこなくなったり、ジョキング中にそこがどこかわからなくなったりするのだった。「若年性アルツハイマー」という珍しい病気に焦点を当て、徐々に変わっていき、自分を失っていくアリスと、彼女を支える家族の姿が描かれる。

まず、これはジュリアンムーアがめっちゃ素敵。こーゆー風に年取りたい。娘役のクリスティンスチュワートも、うまい!←レズっぽくてかわゆいw 彼女はいろいろスキャンダルもあったけど、女優として成長してるのが見て取れていい感じです。

そして、この映画はアルツハイマーという病気のよい啓蒙だと思った。

劇中で、アリスが「癌だったらよかったのに。皆、一緒に歩いてくれてリボンをつけてくれて……」と語るシーンがあるから。病気同士を比べることはバカバカしいが、確かに、アルツハイマーは、「ボケ」とか「痴呆」と呼ばれたりで、なんとなく社会の理解やリスペクトが欠けていたかもしれない。少し前に、ビューティフルマインドと統合失調症について書いたけど、この映画アルツハイマーについて理解を広めるよいきっかけになるはずだ。去年は、アイスバケツチャレンジのALSだとかいろいろ病気の啓蒙活動が話題になったけど、今年はこれでアルツハイマーが注目を浴びるかもしれない。

静かなアリス

静かなアリス

実はこの映画の監督の一人は、ALSで闘病していたのだが、今月亡くなった(アカデミー賞受賞の時にはまだ存命だった)。

ジュリアン・ムーアアカデミー賞受賞スピーチによると、リチャードがALSだと診断された時、夫のウォッシュは何をしたいか尋ねた。旅行したい?世界を見て回りたい?リチャードは、「映画を作りたい」と答え、そして『アリスのままで』が出来たんだとか(涙)←そしてそう、この監督はゲイなのだ!

この映画の原作の著者Lisa Genovaの話も面白い。彼女は、ハーバードで神経科学の博士を取り、もともと医療業界のコンサルタントとして働いていた(アリスも原作ではコロンビアではなくハーバードの教授という設定)。しかし小説家になりたかった彼女は、ライターズカンファレンスに行ったり、エージェントを探したり、エディターにメールしたり、ネットワーキングを頑張って出版社を探そうとする。しかし、どこにも相手にされず、結局彼女は、iUniverse - Self Publishing Company | Book Publishersという会社に450ドルを支払って、この映画の原作小説である『Still Alice』を自費出版したのである‼︎わーお!

原作タイトルの『静かなアリス』もいいけど、映画邦題の『アリスのままで』の方がどっちかというとStill Aliceの感じに近いかなと思った。Still は静物画(still life)とかにも使われるので静かとかそういうのは間違ってないんだろうけど。実際アルツハイマーが進んだアリスは最後「じっと」してる感じでもあるし。でも、そうなっても「まだ」アリスなんだよ、っていう方がわたしの心には強く残った。

追記: その後、若年性アルツハイマーについて調べたら、こんなブログを発見した。若年性アルツハイマーを発症したお母様の介護されている娘さんのブログ。初めのエントリからずーっと読破しているのだが、お母様への思いがあふれていて、何か泣けてくる。介護で疲れている人にもおすすめだ。

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