Love is timeless. #TheDanishGirl now playing in NYC & LA. https://t.co/VA6V7CuXCt pic.twitter.com/PIGvFE8EUk
— The Danish Girl (@danishgirlmov) November 28, 2015
あらすじ
世界で初めて女性への性別適合手術(SRS*1)を受けたデンマークの 画家リリー・エルベを描いた『リリーのすべて(The Danish Girl)』。1920年のデンマーク・コペンハーゲン。風景画家として成功しているエイナル(エディ・レッドメイン)と、人物画を描いているが画廊への売り込みが成功しない妻のゲルダ(アリシア・ヴィキャンデル)。ある時、エイナルのドレスを着せてモデルにした作品が画廊に売れたため、ゲルダはエイナルの女装姿を「リリー」と名付け、製作を続けることに。ゲルダの絵が起動にのり、パリに引っ越した二人。エイナルは内なる「リリー」が大きく育ち始めるのを感じ、世界であった「性転換手術」をしてリリーとして生きることを決める。リリーの思いを尊重したい思いと、夫であったはずのエイナルを失う苦しみとの間で苦しむゲルダだが……。
感想(これ以降、ネタバレ含みますので要注意)
映画としてはものすごく美しくまとまっていたと思う。リリー役のエディ・レッドメインがめちゃくちゃ可愛いし、ものすごい演技力。さすが、オスカー役者だけのことはある。ドレスやストッキングの感触に恍惚とし、目覚め始めるあたりや、スーツの下に下着を着ているところや、「全裸股間挟みシーン」など、ここまでやるか!っていうくらい演じきってくれました。←はい、修正なしでエディのアレをしっかり見てしまいました。
そんで、リリーって、可愛いんですけど、結構ジコチューなんですよね。もちろん「真の自分を見つけるため」という強い動機の前では、誰しも多少はジコチューになってしまうものかもしれませんが。
まず、「もう女装はしないで」と言われた後、妻に黙って家出。女装をしまくり。自分に言い寄ってくるゲイの男(ベン・ウィショー*2)とデートを重ねる。←いや、いいけどさ。妻に何か言おうよ。
デート相手に「女」としてパスしなかった時には、ブチ切れて、妻に泣きつく!さらに、売れっ子になった妻のために、パリに引っ越した後は、覗き部屋に通い、女性のしぐさを学ぶ。さらに、「絵を描く」のは男だったエイナルの一部なので、絵を描くのをやめて、妻の手伝いに専念する。妻は「今、あなたがどんな絵を描くのか見たい」「あなたの心のなかに今何があるのかわからない」と何度も促すのだが、画家としては筆を折ってしまう。
子供時代に一度だけ男とキスしたことがある相手ハンス(マティアス・スーナールツ*3)が、パリで成功したアートディーラーとして、登場するのだが、リリーは彼のことを好きになってしまう。んもぅ。リリーものすごく可愛いんだけど、結構つきあうの大変そう!
でも、トランスジェンダーを描いたものとしては、結構リアルだと言えるんじゃないかな?
「医者が君を女にしてくれたんだね」と言われてこういうシーンとか。
"God made me a woman, but the doctor was curing me of the sickness that was my disguise,”
こんな風に色んな意味でリアルなリリーに対し、妻のゲルダ役の愛情と苦悩はものすごく美化されている。
レズビアンであるわたしからすれば「女の子になってくれるの?大歓迎!」って感じだけど、ストレートの女性にとっては、愛した男が女になっていく……っていうのはかなりキツいことなんですよね。何より、自分自身も「レズビアン」になってしまうわけですから。時代背景もあるし「女になったってそのまま女同士つきあっていればいいじゃん」とはならないですよね。
夫を失う喪失感により混乱し、ハンスに頼り、時には誘われながらも「わたしはまだエイナルの妻ですから」と最後までリリーを支えるゲルダ。偉い。
最後、ラストシーンの、ゲルダがつけていたリリーのスカーフが空へ飛んで行くシーンは美しかった。
スカーフを捕まえようとするハンスを「いいの」と静止するゲルダ。
強い風に乗ってどこまでも飛んで行くスカーフは、とうとう自由になれたリリーの魂を表しているようで泣けてしかたありませんでした。
というか、自分はかつてトランスの子とつきあっていたので、彼女のことを思い出して、「彼女もこんなだったのかな」とか思って、映画の序盤から泣けて泣けてしかたありませんでした。
気になったところ
という風に、気持ちよく感動することはできたのですが、これは、実話を基にしているため、「本当のリリー・エルベってどんな人だったんだろう」と調べていくうちに、「映画と本当にあったことと違うよね」っていう部分がかなり気になりました。この物語を美しく終わらせるために、リリーはあのタイミングで死ななければならなかったのかなあと。美しく完璧なラブストーリーのために、ご都合主義的にやっぱりトランスジェンダーが殺されなければならないのかな……という感想を抱いてしまいました。美しい悲劇のために、同性愛者やトランスジェンダーが死ぬ映画には結構うんざりなんですよね。
現実のリリーは、4回の性別再判定手術を実施(映画では2回の手術を実施し、2回目の術後に回復することなく亡くなっている)し、リリーとゲルダは離婚し、ゲルダは他の男と再婚。さらにリリーは、術後男性と交際をし、彼との結婚を望んでいたと言われています。リリーは、「美しく弱々しい存在」ではなく、世界で初めての手術を3回も乗り越えた勇気ある女性であり、ゲルダと別れた後も、強く生き抜いていたのです。
まあ、それじゃ綺麗な映画にならないから「ああいう終わらせ方」にしたのはわかるし、それがちゃんと成功していた。映画だけ観たら、ものすごくパーフェクトな出来なんだけど。そんなフィクションなら、既に沢山ありそうじゃないですか。ドキュメンタリーではないので、ある程度の脚色はしかたないと思うけど、それにしても、綺麗にまとめ過ぎかなーって思いました。
「世界で初めて外科手術を受けたトランスジェンダー」である本当のリリーのことをもっと知りたくなりました。
評価
- 泣ける度 ★★★★★
- トランスのリアル度 ★★★★
- 史実を学べる度 ★★
上で書くの忘れたけど、アンバー・ハードも出ていますw
映画『リリーのすべて』公式サイト 2016.3.18[FRI] ROADSHOW
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