#あたシモ

アメリカで働くレズの徒然

面白い英語のPodcast探してる人にオススメ→実在の殺人事件を題材にした人気ポッドキャスト『シリアル』と『アンディスクローズド』

多くの中毒患者が続出していた人気ポッドキャスト『SERIAL』。 このポッドキャストと同じヘイ・ミン・リー事件を扱ったポッドキャスト『Undisclosed』が今週始まった。

SERIAL
http://serialpodcast.org/

Undisclosed
http://undisclosed-podcast.com/


1999年の1月13日、メリーランド州バルチモアにあるウッドローン高校の3年生であるへイ・ミン・リーという少女が姿を消した。一ヶ月後、彼女の遺体が、市内の公園で発見された。首を絞められたのだ。彼女の元ボーイフレンドである17歳のアドナン・サイェドが逮捕され、一年以内に、終身刑を言い渡された。物的証拠はなかった。彼の有罪の大きな証拠として使われたのはたった一人の証言に基づくものだった。アドナンの知りたいであるジェイが、遺体を埋めるのを手伝ったと証言したのだ。しかしアドナンは、一貫して自分はこの犯罪に無関係だと主張してきた。アドナンの友人の姉で弁護士でもあるラビアもアドナンの無実を信じていた。

バルチモアの地方メディアで活動していたことのあるジャーナリストサラ・コーニグは、1999年に起こったこの事件について調査してくれるようにラビアから依頼され、15年も近く昔に起こったこの事件について調べることになり、一年近くも調査に費やしたその結果を「SERIAL」というポッドキャストにして発表したところ、瞬く間に国際的な注目を浴びるようになった。

★ ★ ★

アドナンはパキスタン系移民の両親の間に生まれ、厳しいイスラム教の教えの元育てられた。顔がよく、スポーツマンで、友達が多かったし女の子からも人気があった。しかし、厳しい家庭では、女の子とつきあうなんてことは許されていなかったので、ヘイとの付き合は秘密だった。ヘイも、韓国系の移民の子供だったので、移民の両親を持つという共通点があったのだ。二人の付き合いは10代らしい情熱的なものだったが、つきあいに反対するアドナンの両親の邪魔もあり、二人は別れることになった。その後、ヘイは新しい彼氏と付き合いだした。検察官は、「裏切られたと感じたアドナンがヘイを殺した」と主張した。しかし証言によれば、アドナンは、ヘイに対して怒りや恨みを感じている様子はなく、むしろ複数の女の子とデートするなど、遊び人っぷりを発揮していたのだという。

ヘイとアドナンは別れた後も友達だったようだ。ヘイが殺された日、アドナンはヘイに電話しているし、また学校では「放課後車で送ってほしい」とヘイに連絡しているところを目撃されている。実際にはヘイはその後「忙しい」といってアドナンの頼みを断っているところが目撃されているが、アドナンは「車で送ってくれ」と頼んだことを否定している。一体アドナンは忘れていたのだろうか?それとも、嘘を付いているのだろうか?

★ ★ ★

ヘイの遺体が発見されたのは、「遺体がゴロゴロ見つかる」ことで有名なリーキンパークという公園だった。遺体の第一発見者ミスターSは、用を足そうとして森に入り、「たまたま」ヘイの遺体が埋められているのを見つけた。しかし、現場は道からはかなり離れていたし、遺体は巧妙に隠されていた。「たまたま」見つけられるようなものだろうか?ミスターSには、公然わいせつ(彼には露出癖があったようだ!)などの前科があったこともあり、警察は当初ミスターSを容疑者の一人としてマークした。

★ ★ ★

そんな時、警察に匿名の電話がはいった。「ヘイの元ボーイフレンドを調べろ」といって電話は切れた。

数分後同じ男がかけ直し、「ヤーサー・アリという男が何かを知っているかもしれない」と言い残した。

逆探知はできず、今でもこの男が誰なのかはわかっていない。

ヤーサー・アリはアドナンと同じモスクのメンバーだった。殺害があった13日に、アドナンの携帯電話からはヤーサーに二回の電話がかかっている。しかしヤーサーは何も知らないと証言した。

★ ★ ★

ヘイは1月13日に高校の授業が終わった後2:15には目撃されている。そして、警察の発表によれば、携帯電話などの情報からすると、ヘイは2:36には殺されていた可能性が高い。つまり、午後2:15〜2:36の21分間のどこかで、ヘイは殺されたのだ。アドナンにはその時のはっきりと覚えているアリバイがなかった。図書館?陸上部の練習?

アドナンのクラスメイトのエイジアという女の子は、犯罪が行われたとされる時間に、アドナンのことを図書館のPCコーナーで見かけ、会話をしたという手紙を何度かアドナンに書いたが、この証言は裁判では使われなかった。

弁護士はエイジアを探し出し、証言してくれるように依頼しようとしたが、エイジアの婚約者が出てきて「エイジアとは話せない」と言った。しばらくしてエイジアは検察官に電話し、かつての証言は「圧力を受けたものだ」と言ったのだ。

消えたエイジアのことを探しまわっていたサラの元に、ある日非通知の電話から連絡がある。エイジアだった。エイジアはやはりアドナンを図書館で見たという。しかし、探偵が家に訪れて来た時に「もうこれでうんざり」と思って、関わりになりたくなかったのだという。図書案の監視カメラや、PC利用申し込み書は古いシステムだったので、もし当時迅速に調査が行われていても、既に証拠失われていただろう。どちらにしろ、エイジアの証言は、法律的にはもう何の意味も持たない。

★ ★ ★

ヘイが殺された日は、ジェイのガールフレンドであるステファニーの誕生日だった。ジェイは、ステファニーに誕生日プレゼントを買うために、アドナンの車と、携帯電話を借りた(不思議なことに、アドナンは、既にステファニーにプレゼントを買っており、さらには、ジェイに対して「ステファニーにプレゼントを買ったか?」と心配もしている。なぜ他人のガールフレンドにプレゼントを買ったり、そのボーイフレンドがプレゼントを買っているかなどを気にするのだろうか?アドナンは「ステファニーとは仲がよかったから」と答えている)

ジェイによれば、アドナンは、ジェイに「ヘイを殺すつもりだ」と伝え、ジェイはそのことを女友だちのジェンにも伝えた。そして夕方になり、ジェイはアドナンに呼び出され、「遺体を埋めるのを手伝った」のだという。

ジェイとアドナンはさほど仲の良い友人というわけではなく「知り合い」だったようだ。しかしジェイはアドナンを始めとする高校生に対してマリファナを売っていた。当時厳しかった麻薬の取り締まり法を恐れ、ジェイはアドナンを手伝ったのだ。

しかしジェイの証言は、二転三転し、警察に対しても「嘘をついていました」と認めざるを得なくなる。

★ ★ ★

被害者であるヘイの日記や、刑務所のなかにいるアドナンとの会話、取り調べの録音テープなどを駆使して、 臨場感のある調査の様子を届けてくれるこの『SERIAL』は、音声だけのポッドキャストにも関わらず、ものすごく興味深い。

さらに、実在の事件を元にしているため、裁判の資料や証拠、関係者へのインタビューなどがどんどん出てきて、すごいことになっている。

例えば、SERIALのなかでいかにもあやしい人物として描かれたジェイ。

ジェイは、サラと会ってはいるが、『SERIAL』に出演することを拒否している。沈黙を守っていたジェイだったが、独占インタビューを公開し、ネット上で個人情報を暴かれ、脅されるなどの被害にあっていることや、SERIALによってもたらされた被害について述べている。(ジェイは、サラかポッドキャストの関係者が、調査の過程で手に入れたジェイの個人情報をネットに流していると信じている)

https://firstlook.org/theintercept/2014/12/29/exclusive-interview-jay-wilds-star-witness-adnan-syed-serial-case-pt-1/

現在第二シーズンに向けての準備を進めている『SERIAL』だが、先駆けて『Undisclosed』が始まったので、ちょっとした話題になっている。

http://www.nytimes.com/2015/04/08/business/media/another-serial-chapter-from-group-of-lawyers.html

http://www.huffingtonpost.com/2015/04/13/adnan-syed-undisclosed-podcast_n_7057760.html

『Undisclosed』の運営は『SERIAL』とは無関係だが『SERIAL』にも登場する弁護士のラビアがホストしている。ラビアは当初からアドナンの無実を強く信じており、「アドナンに自由を!」というような運動をしているため、このポッドキャスト『Undisclosed』の中立性に疑問の声も上がっていたが、初回が終わったところでは概ね好評のようだ。ーーというよりSERIAL中毒患者が、事件に関するどんな情報でも飢えた獣のように飲み干しているだけなのかもしれないが。

ミステリ、特に実在の犯罪物が好きな人にとっては、マストなシリーズだろう。 わたしはJFKとか、犯罪の記録とか読むの大好きなので、これもかなりワクワクしながら聞いている。あと、英語の勉強にもなると思うのでリスニングの材料としてもぜひ。

JFK コレクターズ・エディション 特別版 [DVD]

JFK コレクターズ・エディション 特別版 [DVD]

ちなみに、この事件では、再度審理が行われることが今年の2月決まっている。これもポッドキャストの効果なのだろうか?