#あたシモ

アメリカで働くレズの徒然

相手のことを嫌いな気持ちも好きな気持ちも、伝わっている

人が誰かに好意を抱いたり、嫌ったりしてるのは、驚くより簡単に伝わっている。

 

だからわたしがこの子を疎ましく思ってることも、あの子に飽きたことも、あなたのことが好きなこともきっと伝わってるのだろう。 

 

それは悪いことではないし、隠すつもりもない。

 

なぁんてね。 

 

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トランプ大統領になった後からずっと、まるで夢の中のような、シュールリアリズムの絵画の中の無人の街を彷徨っているような奇妙な感覚に陥っていた。

 

いや、そんなはずないよね?そんなはずないはずなのに、なんでそうなんだ?って……。

 

この感覚は……そうだ。昔、学生時代に、好きだったあの子が自ら命を絶った時の…あの感じに似てた。

 

そんなはずないよね?  

 

なんでそんなこと言うの?そんなことあるはずないのにって。

 

なんだっけ?

 

死の受容における5段階だっけ?

 

否認、怒り、取引、抑うつ…とかっての。

 

その、まさに、否認の段階にいた。

 

そして、英語で言うならI was feeing lost.見失っていた。どこへ行けばよいのか。何をすればよいのか。何を感じればよいのか。

 

アメリカという国が、トランプを選んだことがまだ信じられなかった。

 

抗議活動は、そんなlostな状態だったわたしに、やることを与えてくれた。そうだ、嘆いている暇はないのだと。今ここで、立ち上がって、ノーと言うことは、きっと意味があるはずだと……。

 

ちょうどこの時、友人たちも嘆きの声をたくさん投稿していたのだが、そんな中でひとつとても心に残っているものがある。

 

それも、立ち上がろう!と言うようなメッセージのものだった。

 

抗議活動の当日、ダウンタウンの市庁舎前には、多くの反トランプ抗議者が集まっていた。わたしはそこで初めて、自分の住むこのカリフォルニアは、やっぱり青かった(民主党支持だった)し、この街では自分のように感じる人が多数であることを思い出した。

 

それはかなり救いとなるものだった。「カリフォルニア独立運動」がバズり出したのも、この辺。

 

しかし、わたしは気づいていた。何が何でもヒラリーがよかった!と考えている人たちは、「トランプに投票した愚かなレイシストたちが悪い!お前らのせいだ!お前らは差別者だ!」と発言したり、「第三政党に入れた人のせいで負けた」「中西部のせいで負けた」と発言しているが、その一方で、プライマリーで、サンダースに投票したり、本選挙でも、苦渋の選択の末第三政党に入れたり、ヒラリーに入れた人たちは、「ヒラリーが、ベストな候補者でなかったから負けた」と考えており、そこには大きな溝があることを。

 

わたしはそもそも有権者ではなかったが、それでもヒラリーに対して微妙な思いを持っていた。だからヒラリーならよかったと信じきっている人の話にはどうも同調できない。

 

かといってそのままトランプがよいわけでもない。当たり前だが、カレーとうんこはいくら似ていても区別くらいつくし、いくら似ていても比べること自体アホなのだ。

 

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人々は、トランプを求めたんですよ。

 

あなたが涼しい顔で解説してくれた時、わたしは激しく失望したし、あなたに対して感じていた全ての好ましい印象が真っ黒に塗り潰されるのを感じた。

 

はぁ…。

 

でも、ヒラリーがこれまでにない大差で得票数を集めていることがわかった今、もうそんなことは言えない。言わせない。

 

わたしは軽蔑的にならないよう最大限の注意を払いながら、不同意を示すために鼻から勢いよく空気を吐き出した。

 

でも、わたしのこんな気持ちも、すぐに伝わってしまうのだろう。トランプに対して中立的で評論家的なコメントを出すような人は大嫌いだし関わりたくもないのだ。

 

さようなら。

 

わたしは小さく溜息をついて歩き出した。まだトランプ政権下の4年間は始まってすらいない。