#あたシモ

アメリカで働くレズの徒然

黒人映画だけどトラウマなし!良質なラブストーリー『ザ・フォトグラフ』はステロタイプを超えたマイノリティ作品ということでちょっと『キャロル』を思い出した(文字数

The Photograph (Original Motion Picture Soundtrack)

バレンタインデーに公開された『ザ・フォトグラフ(原題:The Photograph)』を観てきました(デートです♡)。

ザ・フォトグラフあらすじ(ネタバレなし)

NYで働く雑誌記者のマイケル(ラキース・スタンフィールド)は、ニューオリンズで取材中に、写真家のクリスティーナ(シャンテ・アダムズ)の作品に出会う。「彼女は写真家になるといってNYに出ていった。今は音信不通」と語るのはかつてクリスティーナの恋人だったアイザック(ロブ・モーガン)だった。

アイザックのために、NYでクリスティーナの近況を探ったマイケルは、クリスティーナの娘メイ(イッサ・レイ)と知り合う。クリスティーナはがんで亡くなったばかりだったが、病にかかっていることすら娘に知らせていなかった。母からの手紙を読み、これまで何も知らなかった母の人生、そして自らの秘密についても知るメイ。マイケルとメイは惹かれ合うが、マイケルはヨーロッパに転職をしようとしていた。思うように思いを伝えきれない二人。80年代にクリスティーナとアイザックの間には何があったのか?そしてマイケルとメイの恋の行方はどうなるのか?

ザ・フォトグラフ感想(ネタバレあり)

面白かった!かなり気に入りました!

上質な恋愛映画…と見せかけて、80年代を舞台にした母の恋愛物語でもあり、母の人生を知らなかった娘が、手紙を通じて母を知り、最後には、母のメッセージを受け取って変わっていくという女性の成長の物語でもある。「フォトグラフ」というタイトルが示す通り、「写真」が多いな役割を果たしており、実はフォトグラファーだった母親のクリスティーナが真の主役なのでは?と思えるくらい。すっかりイッサとキース二人のラブラブ恋愛モノだと思いこんでいた私にとっては、新鮮な驚きでした。あ、もちろん二人は期待通り非常に美しいです。惹かれ合っていく二人のケミストリーも自然で、セクシーです。

母クリスティーナの物語

メイの母親クリスティーナ役が非常によかった。この映画自体冒頭は、クリスティーナがホームビデオに対して語りかけるところから始まります。「もっと愛が得意だったらよかったのに…」そう語る彼女の過去には何があったのか?実は、このクリスティーナは、NYで写真家になる!という夢を持ち、一人で上京し(ってアメリカでは言わないか)、コネもないようなところから「私は才能もあるし、誰よりも頑張るから」と白人のライバル達を蹴散らして仕事を取ってくるようなバイタリティがある。まあ強い女なのです。で、そんなクリスティーナを愛してくれていた無骨だけど純粋なアイザックなのですが、何も言わずにNYに行っちゃったもんだから、そりゃ、悲しむよね。悲しんで、別の女と結婚してしまいます。それを知り、あっけに取られて泣くクリスティーナ。うん、恋愛下手だなクリスティーナ。

似た者同士の母娘と、娘の成長

全てが明かされたあとで、もう一度流されるクリスティーナのビデオ(これは実は美術館での展示の一部であることがわかる)、「もしももっと愛が得意だったら……」それを見つめていたメイは「はっ」となるんですよね。

メイは、生前何も話してくれなかった母のクリスティーナに怒りを覚えていますが、実は、自分も、自分の望みを素直に伝えることができなくなっていた。そのことに気づいたんですね。うん。ここらへん「予想できるわー」って感じの人もいると思うけど、私は、肯定します。素直でいいじゃないですか!

音楽サイコー!ジャズ、ネオソウル系好きにはたまらないよ

アンダーソン・パーク、ジ・インターネット、ソランジ、エリカ・バデュー、H.E.R、などフィーチャーされている曲も素晴らしいし、ロバート・グラスパーが手掛けたドラマティックな楽曲の数々が登場人物の心の動きをあらわしており、ジャズ好きはたまらないことでしょう。逆にジャズ苦手な人は苦痛かもw

The Photograph (Original Motion Picture Soundtrack)

The Photograph (Original Motion Picture Soundtrack)

  • 発売日: 2020/02/07
  • メディア: MP3 ダウンロード

ストーリーのなかでも、音楽は大きな役割を果たします。初デートで二人はドレイクとケンドリック・ラマーの音楽について語ります。

「ケンドリック・ラマーは理想主義すぎる。聞くと、罪悪感を感じる」というドレイク派の彼女。黒人に対する抑圧をラップするケンドリックですが、マイケルとメイはともにジャーナリストと美術館の学芸員という知的な職業についており、いわゆる「勝ち組」だと思います。そして、この作品は、いわゆる「黒人としての困難」についてはほとんど触れられておらず、悲劇もなければトラウマもありません。ギャングも出てこなければ、ドラッグ売買もなければ、牢屋も出てきません。運転中に警察に止められたら…っていうのも冗談としてしか出てきません。そこが新鮮!と評価もされているんですよね。おそらく、『キャロル』が出てきた時、「誰も死なない!悲劇じゃないレズビアン映画」ってとこで非常に評価されたのと似てるのかな?

そんななかで、メイが「罪悪感」を口にするのは興味深かったです。「サバイバーズ・ギルト」という言葉がありますが、もがき続ける「仲間」を尻目に成功したマイノリティにもある心理なのでしょうか。この「罪悪感」は映画の後半にも登場するキーワードです。

監督のステラ・メギーに大注目!

本作の脚本と監督を務めたのはステラ・メギー。過去には『Everything, Everything』でアマンドラ・スタンバーグを主演に作品も作っています。彼女の作品を観るのは初めてでしたが、明らかに才能があるクリエイターなので、今後応援したいと思います。

▼ステラ・メギーのインタビューはここで読めます(日本語)

ザ・フォトグラフ評価

ロッテントマトの評価は、批評家スコアは74%、視聴者スコア82%とまずまずの高評価を得ています。皆が両手をあげて絶賛する名作!というわけではなく、好き嫌いが別れています。

しかし!

わたし的にはこの映画は非常に好きですね。推しが出てる、ジャズが好き、などの「贔屓目」があることは否定しませんが……。恋愛映画、生涯ベスト十本のうちの一本に入ります。日本公開予定は不明ですが、もしも機会があれば、ぜひ観てみてください。

  • デートに最適度 ★★★★★
  • 女性の応援度 ★★★★☆
  • オシャレ度 ★★★★☆ 

ザ・フォトグラフ概要