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アメリカで働くレズの徒然

歴史に残る名作になるポテンシャルはあった。ディズニー新作映画『Wrinkle in Time』の残念さとは

A Wrinkle In Time

ディズニーの新作映画『Wrinkle In Time』を観てきました。『Wrinkle In Time』は、日本ではあまり知られていませんが、アメリカでは非常に人気のある同名の児童書『Wrinkle In Time』を原作とした映画です。続編も出ていてTime五部作となっています。

一応『五次元世界のぼうけん』として邦訳されているようですが知名度どうなんだろう?わたしは数年前まで知らなかったのですが、彼女のFちゃんが子供の頃何度も読んでいて大好きだった本だ……ということで、前から「ぜひ読んで」と言われていて、家にも本があったので、映画化されると聞いてものすごく楽しみにしていました。

A Wrinkle in Time (Madeleine L'Engle's Time Quintet)

A Wrinkle in Time (Madeleine L'Engle's Time Quintet)

↑ファンタジー小説っぽく、一部造語も入っていますが、全体的にとても読みやすく、洋書初心者の方にもおすすめできます。

『Wrinkle In Time』のあらすじ

四年前に宇宙物理学者の父親が謎の失踪を遂げたメグの一家。変人の弟チャールズ・ワレスと共に学校でいじめられ辛い思いをしているメグの前に、ある嵐の夜、不思議な魔女が現れ、「<テザラクト>は存在する」という。

メグにとっては聞き慣れない言葉だが、それを聞いて顔色を変えた母親。テザラクトとは、かつて父親と母親が共に研究していた存在だった。父親はまだどこかで生きている?

不思議な魔女たちに導かれ、メグとチャールズ・ワレスは、父親を救い出す旅に出る。

『Wrinkle In Time』の感想

一言で言うなら「悪くないのだけど、物足りない」。

大画面一杯に広がるなビジュアルは息が止まるほど素晴らしいし、自己受容の大切さを描いたメッセージ性も、多様性に目配りしたキャスティングも、素晴らしい。笑えるリース・ウィザースプーンも、偉大なるオプラも、『ハンガー・ゲーム』を思い出させるような派手なコスチュームも、楽しい。なのだけれど、なのだけど……何かが足りない……。

※キャピトルのファッション、好きだったわ〜!

正直、この感覚は、予告編を観た時から薄々感じていたものでした。そう、ティム・バートンの『アリス』に感じた落胆と非常によく似ています。ビジュアルが素晴らしいのに何か残念という点では『アバター』とかにも似てますネ。

ものすごく仰々しいビジュアルエフェクトにフォーカスしたために、物語のロジックや、ストーリー作りが大雑把に感じてしまったのです。

もちろん、ファンタジーなので、そこまで厳密に「メイクセンス」する必要はないのかもしれませんが、原作にはキチンと書き込まれているのに、映画のなかで雑に処理されているために「ん?」というまま進んでしまう箇所が多いように感じました。

原作に描かれていることを全ていれることは不可能だし、よい映画にするために、原作の要素を刈り込むことが必要で効果的な時もありますが、『Wrinkle In Time』ではそれがちょっと残念な方向に進んでしまったのかもしれません。

あ、でもね。『Wrinkle In Time』の映画のクライマックスはかなりぐっと来ます。色々いいましたが、子供には両手を挙げて観せたい!おすすめできる映画ですね。

ブラックプライドを掲げた監督

さて、ここで特筆すべきは、最近のディズニーの行動です。この『Wrinkle In Time』の予告編が出た時、わたしは正直いって「おお!黒人が主人公なのか」とびっくりしました。原作では当然のように白人の家族が想定されていたからです。確かメグの家族は赤毛の設定だったはず。*1

それもそのはず……というか、この『Wrinkle In Time』の監督は、過去に『グローリー/明日への行進(Selma)』や『13th』などの、かなり政治色というか人種色の強い作品でアカデミー賞にノミネートされたエイヴァ・マリー・デュヴァーネイ。

また、制作費1億ドルを超える作品の監督を女性が務めたのは、デュヴァーネイが3人目。そして、黒人女性がこの規模の映画の監督を務めるのはなんと史上初。

ということで、ここ数年吹き上がっていた「ハリウッドに多様性を」という呼びかけに、ディズニーがバッチリ答えているのがビンビン感じられてるわけです。

この作品だけではありません。『Wrinkle In Time』の直前に公開され、現在もボックスオフィスの一位を走り続けている『ブラックパンサー』も監督・脚本はライアン・クーグラーは黒人(そして黒人監督としては最高の公開週の興行成績)、さらに主要キャストもほぼ黒人オンリーという、ハリウッドのメインストリームとしては多様性に目配りをした内容になっています。

もちろん、両作品とも、そういう制作陣やキャストの人種「だけ」で評価することはできません。しかし「人種関係ないよね」という世界が実現していない現実においては、ディズニーが立て続けにこういう試みをしていることは、やはり評価するべきですし、素晴らしいなと思います。去年は『COCO』などでラテン系の文化を取り入れることもしていますし、『美女と野獣』ではゲイ表象なども魅せてきてますし……全ては『アナ雪2』への布石か。

は〜そう考えれば考える程、『Wrinkle In Time』の物語としての物足りなさがものすごく残念に思えてきてしまいます。

『Wrinkle In Time』は「上質な子供向けエンタメ」を越えて、本当にもっと面白くなるポテンシャルがあったし、その重要性を持っている映画だったと思います。(というか大体この古典作品を今映画化したこと自体、今、親となっている大人層を狙ってると思うのですが……)。

『Wrinkle In Time』の評価

  • ビジュアル度 ★★★★★
  • 多様性&ポジティブメッセージ度 ★★★★★★
  • 物足りない度 ★★☆☆☆

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*1:同じように原作では赤毛だったのに、ドラマでアジア人のキャスティングをされたのには『プリティー・リトル・ライアーズ』のエミリーがいます。